患者さんがよく抱く気になる質問にお答えします。
反復性肩関節脱臼を根治する手術には、どのようなものがあるか教えてください。
反復性肩関節脱臼の手術には、大きく2種類があります。メスを入れて手術する「直視下手術」と、カメラを挿入しそのカメラで肩の内部をのぞきながら手術をする「肩関節鏡手術(関節鏡視下バンカート法)」です。
以前は直視下手術だけでしたが、近年、従来の手術に比べて患者さんへの負担が格段に少ない肩関節鏡手術が注目されるようになりました。
肩関節鏡手術はメスを使わないそうですが、どうやって治すのですか?
肩関節の中で、小さなお皿の部分にあたる「肩甲骨の関節窩(かんせつか)」に、スーチャーアンカーと呼ばれる縫合糸つきのアンカーを打ち込んで、靭帯や壊れた骨などを固定します。固定することによって、脱臼を修復します。
肩関節鏡手術の手順
ポリ乳酸(PLA)製吸収性アンカー(代表例)
スーチャ―アンカーは、体内に残るのでしょうか?
スーチャーアンカーが開発された1990年代初期から中期にかけては金属製のものしか存在しませんでしたが、90年代後半より、体内で吸収されるポリ乳酸(PLA)を主原料とした製品が生まれ、以後スーチャーアンカーの主流となりました。ポリ乳酸は体内で吸収される素材であるため、術後に異物が残ることによって懸念されるリスクを低減します。
肩関節鏡手術は患者の負担が少ないとのことですが、メリットを具体的に教えてください。
従来の手術と比べて、1cm弱の穴を開けるだけの肩関節鏡手術には、以下のようなメリットがあります。
傷あとが目立たない。
手術後の痛みが少ない。
術後の痛みが少ないため、リハビリ導入がスムーズに行える。
リハビリがスムーズに進むことで、術後の可動域制限が少ない。
入院期間が少ない。
筋肉への侵襲が少ないため、術後の筋力低下が抑えられる。
肩関節鏡手術の場合、身体を動かせるようになるまでにどれくらいかかりますか
通常、日常生活の動作は、6週前後で行えるようになります。軽めのスポーツは3カ月、コンタクトスポーツ(接触を伴う激しいスポーツ)は6カ月で復帰が一般的です。
肩関節鏡手術は、術後の痛みは少ないとはいえ、まったく痛みがないわけではありません。また、手術前の検査内容によっては、医師が「肩関節鏡手術では難しい」と判断する場合もあることを心得ておきましょう。
開腹手術にくらべて比較的小さな傷で治療できる「内視鏡下手術」について解説しています。
反復性肩関節脱臼って…なに?